なぜ元本保証ではないのかを思想から考える
「元本保証」という言葉には、人を安心させる強い力があります。しかし、なぜ投資にその保証がないのかを商品の説明としてではなく思想から考えると、本質が見えてきます。
元本保証がないことは、必ずしも「危険な商品」であることを意味しません。投資では、事業の成果が将来に左右されるため、元本や利回りを事前に保証することはできません。重要なのは、保証の有無だけで判断するのではなく、リスクの内容と情報開示の十分さを確認することです。
本記事では、預金と投資の仕組みの違いを比較し、そもそも法令上、元本や利回りの保証が認められていないこと、その上でSAMURAI証券が情報開示をどのように考えているかと、これからの投資との向き合い方を解説します。
この記事の要点
- 元本保証がないことは、必ずしも「危険な商品」であることを意味するわけではない
- 預金と投資では、資金の使われ方やリスクの負い方が異なる
- 投資では事業の成果が将来に左右されるため、元本や利回りを事前に保証することはできない
- SAMURAI証券は、投資家が自分で判断できる環境を構築するため、投資に必要な情報の開示を重視している
- 元本保証ではない投資では、リスク許容度、投資期間、分散の考え方を踏まえて判断することが重要
元本保証という言葉が与える安心感
私たちが投資を検討する際に、無意識に求めてしまうのが「元本保証」です。なぜ人は「減らないこと」にこだわるのでしょうか。
なぜ人は元本保証を求めるのか
行動経済学における「プロスペクト理論」によれば、人間は本能的に「利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛を重く受け止める」性質を持っているとされます。
さらに日本では長らく預金偏重の環境が続いてきたため、元本が減らないことを重んじる考え方が深く根付いています。そのため、元本保証という言葉は、それだけで「これなら大丈夫だ」と思考停止を引き起こしてしまうほど、強力な安心感を持っているのです。
元本保証の金融商品が成り立つ仕組み
円定期預金や個人向け国債※のように「元本保証」を打ち出すものと、その他の金融商品には、どのような違いがあるのでしょうか。
※預金保険制度により、一般預金等は預金者1人につき1金融機関ごとに元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます(決済用預金は全額保護)。なお、個人向け国債は預金保険制度の対象ではなく、国が元本と利子の支払いを行う商品です。
<預金と投資の構造の違い>
| 預金(元本が保護される仕組みあり) | 投資(元本保証なし) | |
| 資金の行き先 | 国債など低リスク資産・貸し出し | 企業や公共の事業 |
| 社会への資金の流れ | 間接的 | 直接的 |
| 不確実性 | 比較的小さい(一定額まで制度で保護) | 不可避(事業リスク) |
| リターン | 安全性が高い分、低くなる傾向にある | リスクを負う対価として期待リターンは高いが、実現は保証されない |
| インフレ | 実質目減りに弱い | 対応できる場合もある |
預金・保険が保証できる理由
銀行預金などで元本保証が成り立つのは、顧客から預かった資金を国債や優良な企業向け貸し出しといった相対的にリスクの低い資産で運用しているからです。
その収益の中から、金融機関の利益を差し引き、残りを顧客に約束した金利として支払っています。「減らさないための運用」に重点を置いているからこそ、元本を保証しやすい仕組みになっています。
保証の裏側に存在する条件と制度
加えて、預金には万が一銀行が破綻しても一定額まで保護される「預金保険制度(ペイオフ)」といった公的なセーフティーネットが存在します。
ただし、その代償として低いリターンを受け入れなければなりません。インフレ(物価上昇)の局面では、銀行の預金金利が物価上昇率を下回る場合もあります。その状況で預金を続けていると、実質的な価値(購買力)が目減りしてしまうリスクも知っておく必要があります。
投資で元本保証が難しい理由
預金とは異なり、投資では元本保証を約束できません。それは、資金が向かう先と、そこで生まれる価値の構造が根本的に違うからです。
お金の行き先が「事業」であるということ
投資の本質は、新たな価値を生み出す事業への資金提供です。
誰かが損をした分だけ別の誰かが得をするゼロサムゲームであるギャンブルとは異なり、投資された資金は社会を循環し、企業の成長や経済活動を支えることで初めて利益を生み出します。つまり、投資家は企業の事業活動に間接的に参加しているのです。
事業の結果は約束されていない、という前提
しかし、どんなに優れた事業であっても、不確実性(リスク)は必ず存在します。市場の価格変動、企業業績の悪化、経済情勢の変化など、さまざまな要因が事業の成果に影響を与え、それが投資のリターンに反映されます。
そのため、投資家に対して事前に「絶対にいくらになって返ってくる」と約束することはできません。だからこそ、投資家がその不確実性を引き受ける対価(リスクプレミアム)として、預金金利よりも高い目標リターンが設定される場合があります。
SAMURAI証券がリスクを隠さず伝える理由
投資の世界では法律上の制約があることはもちろんですが、SAMURAI証券には、リスクも含めて正確に伝えるという思想があります。
リスクを隠さないという思想
SAMURAI証券は、自らをオルタナティブ投資プラットフォームと位置づけています。
保証という言葉で安心感をつくるのではなく、あえてリスクの実態を正確に開示するスタンスを重視しています。表面的な安心でリスクを覆い隠すのではなく、どのような事業に資金が使われ、どんなリスクが存在するのかという構造の透明化こそが、投資家にとって重要であると考えているからです。
オルタナバンクでも、投資家が案件を判断するために、案件概要、運用期間、資金使途、返済原資、担保・保証の有無、想定されるリスクなどを確認できるようにすることが重要だと考えています。
判断を投資家に委ねる意味
リスクを隠さずに提示し、判断してもらうという姿勢は、投資家を突き放しているわけではありません。
「情報がある世界」を構築し、投資家の判断の質を向上させることが目的です。ブラックボックスの中でお任せするのではなく、構造を理解し、自分の責任で判断してこそ、納得できる投資判断につながります。
オルタナバンクは、自身が理解できないものには手を出さず、納得したものにだけ投資できる環境づくりが投資家保護につながると考えています。
元本保証ではない投資とどう向き合うか
「元本保証がない」という事実を前向きに受け入れた上で、自立した投資家になるための実践的な考え方を解説します。
期待値という考え方
元本保証がない世界では、「1回の投資で絶対に損をしないこと」を求めるべきではありません。確率とリターンから「長期的・全体として見てプラスになるか」という期待値で捉える視点が大切になります。
投資における期待値とは、将来的に得られる可能性のある金額の平均値です。理論上は、期待値がプラスの投資を十分な回数繰り返せば、結果が期待値に近づいていく可能性があります。ただし、個々の投資について期待値がプラスかどうかを事前に確かめることはできず、実際の結果が期待値どおりになるとは限りません。
あくまで投資判断の一つの考え方として、リスクとリターンの関係を冷静に捉えるために活用する視点です。
分散・長期という前提
投資のリスクをゼロにはできません。しかし、時間を分散して長期的に継続したり、投資先を複数に分けたりすることで、ポートフォリオ全体のリスクをコントロールしやすくなります。ただし、分散や長期保有によってもリスクをなくすことはできず、損失を被る可能性は残ります。また、貸付型クラウドファンディングのように中途換金が難しい商品では、時間分散の効果が限られる点にも留意が必要です。
元本保証にこだわりすぎず、リスクを分散しながらリターンを積み上げていくことが、これからの投資との健全な向き合い方といえるでしょう。
よくある質問(FAQ)
オルタナバンクは元本保証ですか?
オルタナバンクで扱う投資商品に元本保証はありません。投資した資金は事業に活用されるため、借り手の状況や事業環境によっては、元本や利息の支払いが予定通りにならない可能性があります。
投資はなぜ元本保証が難しいのでしょうか?
投資は預金とは異なり、市場の価格変動、企業業績の悪化、経済情勢の変化など、さまざまな要因によって元本割れするリスクを避けることができないからです。また、出資法により、元本の払戻しを保証して出資金を受け入れることは禁止されており、金融商品取引法でも、断定的判断の提供や損失の補てんは禁止されています。
元本保証がない投資は危険なのでしょうか?
元本保証がないことは、必ずしも危険な商品であることを意味しません。投資には不確実性があり、そのリスクを引き受ける対価としてリターンが期待されます。大切なのは、保証の有無だけで判断するのではなく、リスクの内容、資金使途、運用期間、情報開示の十分さを確認することです。
預金と投資では何が違いますか?
預金は、一定の範囲で元本が保護される仕組みがあります。一方、投資は企業や事業に資金を提供し、その成果に応じたリターンを期待するものです。事業には不確実性があるため、投資では元本や利回りを事前に保証することはできません。
元本保証ではない投資では何を確認すべきですか?
期待利回りだけでなく、資金の使われ方、返済原資、運用期間、担保・保証の有無、想定されるリスク、分散投資のしやすさなどを確認しましょう。また、自分のリスク許容度に合っているか、生活資金ではなく余剰資金で行えるかを確認することも重要です。
まとめ
元本保証という言葉には強い安心感があります。しかし、投資は将来の事業成果に資金を託す行為であり、元本や利回りを事前に保証することはできません。元本保証がないのは、単に危険だからではなく、投資が不確実性を伴う仕組みだからです。
SAMURAI証券が重視しているのは、保証という言葉でリスクを覆い隠すことではなく、投資家がリスクを理解した上で判断できる環境を整えることです。どのような事業に資金が使われ、どのようなリスクがあり、どのような情報が開示されているのかを確認することが、納得できる投資判断につながります。
元本保証ではない投資と向き合うには、損失の可能性を前提に、自分のリスク許容度、投資期間、資産全体のバランスを考えることが欠かせません。保証の有無だけで判断するのではなく、リスクとリターンの関係を理解し、余剰資金の範囲で分散しながら取り組むことが大切です。
【本記事に関する留意事項】
本記事は金融やオルタナティブ投資に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、金融商品取引法に基づく募集、勧誘またはそれらに類する行為を目的とするものではありません。また、当社が特定の有価証券または金融商品の取得、売却、その他の取引を推奨するものではありません。
本記事は信頼できると判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性・最新性等を保証するものではありません。
市場環境や経済情勢の変化により、掲載内容が予告なく変更される場合があります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。
SAMURAI証券株式会社(URL:https://samurai-sc.jp/)
関東財務局長(金商)第36号
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メール:support@alternabank.jp
【参考資料】
全国銀行協会「経済活動と銀行の役割」
https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-h/3803/
預金保険機構「預金保険制度の基礎知識」
https://www.dic.go.jp/yokinsha/kihon.html